2012年2月27日月曜日

小イカ鍋

三寒四温は中国の華北地方や朝鮮半島などで、冬季に見られる天候の現象であるが、当地でも、初夏のように汗ばむ日が続いたかと思えば、乾燥して澄み切った大気が冷たい、冬晴れの日が続く。
 
年中温暖な日和の地方として有名な南カリフォルニアであるが、雨季を迎える冬期には、冱(い)つるような厳寒が幾日かある。特に山沿いや沿岸地帯では、暖炉の火を熾すことが日課となる。
 
真冬の寒空に天狼が輝き始める頃、夕餉(ゆうげ)の膳に鍋料理が用意してあると、ほっと気を和ませてくれる。

「鮟鱇(あんこう)もわが身の業も煮ゆるかな」(久保田万太郎)
東の横綱、鮟鱇鍋に相対するのは、西の正横綱、河豚(ふぐ)鍋である。関西地方では「河豚は食いたし命は惜しい」というように、あたったら死んでしまうので、てっぽう鍋(てっちり)と呼ぶ。

「月星の相触るる夜の河豚づくし」(能村登四郎)
この両横綱の更に上をいく高雅な鍋物がある。家庭料理としては馴染みの薄い、すっぽんの鍋料理だ。但し、台湾式のすっぽん鍋ではなく、あくまでもシンプルで優美な、日本流すっぽん料理の『まる鍋』である。
 
当地カリフォルニアで、旨い、安い、簡単に調理できるのが、小イカのしゃぶしゃぶ。背中の薄骨を取り除いた小イカを、しゃぶしゃぶを食べる時の要領で、まるまんまポン酢に付けて食べる。あるいは、よく熱したフライパンで焼いて、生姜醤油を付けて食べる。ポイントは煮すぎない、焼きすぎないこと。
 
牛肉や豚肉のしゃぶしゃぶと共に、小イカのしゃぶしゃぶを食べるのも愉しい。
「冬盛りスミに置けない小いか鍋」(賛美)

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