2014年10月29日水曜日

至上の愛

ありがとう
世界の隅々まで響け
宇宙の果てまで轟け
至上の愛をありがとう
「神はそのひとり子を賜ったほどに、この世を愛してくださった」


2014年10月28日火曜日

てんかん


丘の上の収容所には
ブルースを感じさせる
不協和音の少年がいた

迂遠冗長の少年は
塗炭の苦しみにあえぎながら
破壊と創造を繰り返すのは
もう 疲れた言ったために
保護衣を着せられて
独房に放り込まれた

魔界に魅入られたかのように
絶叫する少年を
看護人が鉄格子の間から
面白半分に竹槍で突くと
一瞬蛮声を上げ
満身が硬直したかと思うと
全身をガクンガクン震わせる痙攣が
数十秒つづいた
やがて少年は深い眠りについた

丘の上には
ブルースを感じさせる
不協和音の少年がいた

まわりくどいが
几帳面で筋骨型の
動きが遅く鈍い少年だった
些細なことで苛立ち
激怒する少年だった


2014年10月27日月曜日

I want you

春雨はエルサレムの乙女のささやき
上弦の月は鴇(とき)色に染まり  
黒真珠の精は
星の彼方に瞬いていた

いつぞや あなたと過ごした満ち潮の丘は
追憶のしじまで 深い眠りについている
ぼくは再び探り当てるだろう
白い雲に隠れて
楚々と咲き誇るブーゲンビリアを
そして
ああ 
欲しいのはペガサスだけ

情愛のこもったあなたの瞳は 
南海の夕なぎが招いた蜃気楼
ぼくを引き寄せる可憐なあなたの指は
雪柳のようにたおやかだ
ぼくは一刻も早く
山葡萄の房のように瑞々しくてやわらかい
ペガサスの胸に顔をうずめたい

その前にぼくは
あなたの吐息に鞭打たれて
自分の心臓を
 自分の足で蹴り上げるだろう

・・・・・・何もいらない

欲しいのは              
欲しいのは
だけ



2014年10月22日水曜日

科学と読書(12年前の記事)

AP通信によると、『怒りの葡萄(ぶどう)』でノーベル文学賞を受賞した作家ジョン・スタインベックの生地サリナス(カリフォルニア州中部)で、スタインベック図書館など三つの公共図書館すべてが、近く閉館されることになった。理由は市が財政難のため、コスト減らしの一環として図書館を閉じる。

先頃、日米文化会館内のマーフィー図書館も、財政難を理由に閉館した。マーフィー図書館には移民文学の貴重な蔵書やスクラップ・ブックが保管されているので、研究者たちにとって資料の宝庫であった。
 
願わくは、いずれの図書館も廃館にはせず、財政が回復すれば再開してほしい。
 
七十年に大阪で開催された万国博覧会のスローガンは、「人類の進歩と調和」であった。科学の歩みは日進月歩であるが、活字離れは若い人たちの思考力を低下させる一方である。この不調和は、一体、人類にどのような影響を及ぼすことになるのだろうか。
 
一書を読了せざれば、他書をとらず。と言ったのは西田幾多郎だが、このスピード時代においては、全く説得力がなさそうだ。三島由紀夫も、昔の人は本の中をじっくり自分の足で歩いた。と回想している。
 
ついこないだ、ウォークマンを頭にして歩いている若者をよく見かけたが、現代人は携帯で話をしながら忙しなさそうに歩く。近い将来、海外旅行に出掛ける日本人は、全員マスクのようなものを口許にかけている。これぞ日本の英知を集めて完成させた自動通訳器。
 
外国人と思うままにコミュニケーションがとれる自動通訳器の氾濫により、世界中で邦人がらみの事件が多発する。
 
科学も読書も人間の心を豊にする。科学は時には人間に弊害をもたらすことがある。けれども、読書は人間の心に潤いを与えつづけてくれる。

 





 

2014年10月21日火曜日

僕が食べたかったもの

夜明け前
へイデン・カルースの詩集を読んでいたら
突然おもてに飛び出したくなった
コーヒー・ショップへ行きたくなった
ベーコンにハッシュドブラウン
それから
スクランブルド・エッグかサニーサイドアップか
ボイルド・エッグかオーバーイージーか
一体どの料理方法が良いのだろう
僕は考えた
一生懸命考えて 考えて 考えた
僕はいつまでも迷っている

まだ眠っているワイフとジョイ
鯛介に桃三郎も起こして
静かで空気の澄んでいるコーヒー・ショップへ出かけましょう
へイデン・カルースの詩と一緒に水浴びをしていたら
早急にコーヒー・ショップへ行きたくなった
けれども なかなか行動には移せない

僕が黙っていると
ウェイトレスは卵の調理法をぼくに尋ねるだろう
「スクランブルド・エッグ オア サニーサイドアップ
僕は無言のままテーブルの前で鎮座している
一体どれを注文すればよいのだ
僕は先ず温かい紅茶をすするだろう
それからハッシュドブラウンは必ず注文する
だがハムかソーセージかベーコンか
卵焼きと同様にぼくには選択することができない

ああ 僕自身
今ここで生きていくべきか死ぬべきか
呼吸をするのかショット・ガンで心臓をぶち抜かれるのか
愛されているのか もてあそばれているのか解らない
おいウェイトレス
コーヒー・ショップの客ども
通りから中を覗き込んでいる偽善者よ
テレビに映っているニュース・キャスターめ
ぼくの胸元ばかりを じろじろと見るんじゃない
見るな
見るなって言っているだろう

ぼくは卵料理をオーダーできないけれど
キッチンから鋭利な肉切り包丁を持ち出してきて
自分の歴史を切り刻み
包丁を口腔に突き刺して首筋を貫通する
鮮血は食道へ垂れ流れて
紅蓮(ぐれん)地獄の形相で白まなこを剥き出して死んでしまうのだ

そこで日系のウェイトレスは
僕が目玉焼きを食べたかったことに
やっと気づくのさ


2014年10月13日月曜日

モルモット

先日、LA癌研究所に定期検診に赴いた。
特に異常はなかった。
経過が良好なので、ドクターから特別治療の延期を告げられた。
モルモットになって二年半。経過が順調なので続けて観察したいという。
まれに見る優秀な患者(モルモット)ですと、ドクターは笑顔で話した。

ねいちゃん(助手)も美人だし。協力するか! と告げると、江美子がこちらを睨みつけた。
ああ~~コワ!



2014年10月8日水曜日

鳥になった少年

夜明け前 沼地が隠れている林の方から
けたたましい鳥の鳴き声が宙に響きわたった
鳴き声をよく聴いてみると鳥は実に楽しそうである
鳥は自由なのだ
鳥は全てに満ち足りているのだ

夜が明けると鳥たちは小さな群れをなして み空でひるがえった
鳥たちは木々の枝にとまって語り合い
しばらくの間 むっく ちょっく ぱっちゅ 戯れている。

少年が鳥になりたいと祈ったら
少年は鳥になった
そして羽ばたいた途端に
天敵にやられてしまった

白い翼を緋色に染めて
むっく ちょっく ぱっちゅ
少年はたちまち喰われてしまった










2014年10月7日火曜日

中国語講座  

中国語で何と言うのでしょう。

    歩く
    トイレットペーパー
    キャリアウーマン
    ニュース





【正解】 ①走  ②手紙  ③女強人  ④新聞




2014年10月6日月曜日

短気

「らっしゃぃ」
「ざるいちめぇ!」
「相変らず早いね」
「こちとら江戸っ子よ、気が短けぇーんだ」

「へい、お待ち」
「よぅよぅよぅ、にめぇも頼んじゃいねぇよ」

「さっさと食え、明日の分だ!」


2014年10月1日水曜日

アベコベ

空に海があり
海に空があったら
飛行機は航海
船はフライト

窓にドアがあり
ドアに窓があったら
泥棒は戸惑う
住人は不便

女は男であり
男は女であったら
番台のオヤジは困る
宝塚歌劇団は混乱する

地獄は天国にあり
天国は地獄にあったら
罪人は天国に行き

良人は地獄に墜ちる