2012年2月1日水曜日

エッセイ・ジョイの性格と文学的遊戯

原稿の整理をしていたら、毎日新聞に連載していた、Mr. Momの子育て奮戦記を見つけましたので、その一部を紹介したいと思います。



ジョイの性格と文学的遊戯 ─ 2004 ─

ジョイの年齢は、間もなく2歳と7ヶ月になろうとしています。僕は日頃のジョイの性格や動作を観察しながら、彼女の性質を箇条書きにまとめてみました。

先ずは短所から、時折かんしゃくを起こす・気まぐれ・反抗的・わがまま。長所は、気が優しい・負けず嫌い・いつまでもこだわらない・明るい性格。

躾の本を見てみますと、2歳児の行動は、かんしゃく・反抗・何でもしたがる・おせっかい・気まぐれ・やきもち・わがまま・けちんぼ・赤ちゃん返り・順番嫌い・臆病・引っ込み思案・泣き虫・けんか・いじめっ子・いじめられっ子・うそつき・まねっ子などが挙げられています。

この躾の本『2才児、自立心とやる気を伸ばすしつけ』(佐藤眞子著/主婦の友社)を読んでみると、「2歳児を理解し、2歳児とともに困難を乗り越えていきましょう」と書いてありました。この年齢は、最も育児の難しい時期なのです。

俗に女の子は育てやすいと申しますが、ジョイも御多分に漏れず、朝は笑顔で目覚めてくれますし、夜は絵本などを読み聞かせると、いつの間にか眠ってしまいます。

『わが子に伝える/絶対語感』(外山滋比古著)の目次に、「おとぎ話は夜、暗がりの中で」という項目があります。

僕は毎晩、ジョイが寝入ろうとしているベッドの傍らで、童話を即興で仕立て上げて、語り聞かせるのが好きです。暗闇の中で集中力を高めながら、想像力を膨らませてみると、自分でも一驚するような物語が完成していることがあります。

『白雪姫』、『金太郎』、『赤頭巾ちゃん』など、前もってジョイからリクエストされることがあっても、夜の語り聞かせだけは筋書き通りに進行しません。

僕は時折、空覚えしているグリムやイソップの会心のフレーズを、即興で作った童話の中に挿入することがあります。
「木々の木の葉が一枚のこらず舌であるとしても、わたしのこのおもいを語りつくすことはできないでしょう」

即興のおとぎ話をこのように結んだら、ジョイは眠ってしまっていて、細君が感動してしまったことがありました。実はグリムの受け売りなのです。

また、時間のある時にはジョイと俳句遊びをします。夜、寝室のバスルームで僕が咳き込んだ際に、傍らにいたジョイが「咳をしても一人」と口走りました。これは尾崎放哉の自由律の句です。

ジョイが最初に暗誦した俳句は正岡子規の「柿喰えば鐘が鳴るなり法隆寺」。遊び半分で始めたつもりでしたが、三つ子の魂は水を吸い取るスポンジの勢いで、次から次へと俳句を吾がものにしていきます。

ジョイが俳句を暗誦している際に気が付いたのですが、自尊心が高いせいか、人から諭されることや、注意されるのが嫌いなようです。

最初は暗誦しようとする俳句を、僕が幾度か繰り返して言うのですが、ジョイが覚えてしまった後で、たまに間違えることがあります。そんな折に助け舟を出したり、正しい句に言い換えて訂正をすると、「わかってるー!」と、大きな声を出しながら悔しそうな表情を浮かべます。

「朝顔に釣瓶とられてもらひ水」(千代女)。この句は、最後の「もらい水」のところを「川の水」と、覚えこんでしまいました。多分、「もらい水」の意味が分からなかったのでしょう。

朝、保育園へ向かう車中で、調子のよい時は暗誦している俳句をすらすらと語り続けてくれます。ジョイが自作の詩歌を吟じてくれるのは、一体いつ頃になるのでしょうか、今から楽しみにしています。

僕はジョイに相応しい文学的遊戯を、今後も大いに活用していくつもりでいます。

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