2012年2月23日木曜日

夕日の癌マン

末期癌は激痛を伴うと言うが、僕は激痛どころか痛みすら感じたことはない。みんなが不思議がる。大きな手術を三度行ったが、術後に痛みを感じたことは全くありません。

むしろ、ストロークの後遺症の方が厄介だ。右半身不随は相変わらずだが、短い距離なら一人でも歩くことが出来る。公園、スーパー・マーケットなら一周できる。右腕は多少動くが、右手は全く駄目だ。

言語障害は遅々として回復しない。日常会話程度だったら喋ることは出来るが、話が込み入ってくると難儀だ。

何処に行くのも付き添いがいる。江美子の目が光っている。
「あなたは、綺麗な女の人だとスラスラと喋るなぁ。しかも自分から率先して」
嫌味とも、小言ともとれる発言を背に受けて、さすらいの夕日の癌マンは、今日も、むせび泣く。

0 件のコメント:

コメントを投稿