2013年11月21日木曜日

ノーザンクロス



ぼくは美しい女の居場所を、ようやく突き止めた。
美しい女は看護師だった。
ぼくはその施設で、目も鼻も口も無い大勢の子供たちと出会った。
両目をかっと見開いたまま、四年近くも眠り続けている銀髪の少女。
おちんちんを二つ持っている坊やは、目のところに口があって、口のところに耳があり、手と足の先が二つに分かれている。
ここにいる子供たちのこころは、限りなく透き通っていて初々しい。
ぼくは美しい女から、片時も目を離さない。

美しいおんなは故郷へいそいそと帰っていった。
美しい女は鬱蒼とした森の奥へ入っていった。こんな所に古びた小さな土蔵がある。
美しくも妖しい陰のある女は、何だか切なそう。
切なくて、切なくて今にも胸が張り裂けそう。
ぼくは見たのだ、美しい女の弟の姿を、
耳の形はまるでコヨーテ、
三角形の頭上には鹿のような角が生えている。
体はぬんめりとしていて、生臭い。 
美しい女は泣き出した。
美しい女が泣いたら、たちまち妖艶になった。
ぼくは美しい女がいよいよ欲しくなった。
美しい女が微笑んだ。
ぼくは美しい女の背後へまわった。
美しい女はぼくを拒んだ。
やがて美しい女は喜んだ。
星が降る夜空に、美しい女の感悦の声がこだました。
美しい女はついに随喜の涙をこぼした。
ぼくは美しい女に恋い焦れたユニコーン(一角獣)
もう二度とお会いすることはありません。
美しい女は白い鳥の姿となって、手のとどかない世界へと飛びたってしまった。
それ以来、夜空に北十字星が美しく輝きはじめた。

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