2011年12月15日木曜日

NYのチャイナタウン

ニューヨークのチャイナタウンは生気に満ち溢れている。街を行き交う種々雑多な人種の波が、グォー グォー と派手やかな音を立てながら鵜の目鷹の目で移行していく。

僕の眼には、ただ群集の精悍さだけが映って圧倒されるだけだ。だが、チャイナタウン独特の大気の匂いの中で、親切な中国系の人々の人情に触れてほっとしたりする。

新鮮な魚介類と野菜、果物が堆く高く積み上げられた店の前では、衣類を売りさばく露天が立ち並び、極彩色の看板を掲げたおびただしい数の酒家(レストラン)のうねりを見渡しながら、僕はいつの間にか、唐の4代詩人(李、杜、韓、白)が酒食の快楽を吟じていたころの思いに誘(いざな)われていた。

サンフランシスコでも、ここニューヨークのチャイナタウンにおいても、意気軒昂に赴いて困る事が一つある。数多とある大、中、小の飲食店と屋台の中から、目移りする気持ちを抑えて、期待を裏切らない一軒を選び抜くことである。

しかしこの度だけはいつもと少し様子が違っていた。66 Bayard Streetにある上海料理店『Nice Green Bo』の前を通りかかった折りに、目白押しの盛況ぶりに魅せられてしまったので、後でここに入る事を決めておいた。

夕刻になって30分ほど待たされたが、その間にくまなくメニューを吟味した。店内は清潔で値段もリーズナブル。ニューヨーク・タイムスを始めボイス・ザ・ビレッジ、デイリーニュース、世界日報がこぞって絶賛している記事が入り口の壁に貼り付けられてある。

如才無い若いウェイターに相談に乗ってもらって、「蟹粉小龍抱」($6.25)と「蟹と生姜と分葱(わけぎ)の炒め物」($7.25)をオーダーした。味の方は今まで食べた中華料理の内でもトップクラス。艶やかで、芳ばしく、奥ゆかしい風味とコクは、声が出なくなるほどに至福にさせてくれる。誓って誇張などしているのではない。

それからもう一つ感心させられたことは、これだけ忙しく流行っているにも拘わらず、キャッシャーの前に立つ50絡みのオーナーらしき女性を始め、スタッフ全員が謙譲な物腰で客と接している。

お陰でニューヨーク滞在中は、ミッドタウン・ウエストにある宿泊先、アラゴンキン・ホテルから、チャイナタウンまで通食する日課が続いたのである。

『Nice Green Bo』のインフォメーション

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