2011年10月20日木曜日

由香の思い出

村雨のリトル東京、時節は如月(きさらぎ)。日米文化会館の地下の一室で、共にアメリカ人に日本語を教えに来た時に、僕と由香との初めての出会だった。

ヤカランダの花が咲き始めた頃に、僕と由香との交遊が始まった。僕は27歳、由香は21歳の日系2世でUSCに在学中。往時の僕は、アダルト・スクールに通っていた。

二人の共通点は、二人ともかに座であることと、鮨が好き、ジャズが好き、アルコールが好き、そして海が大好きであった。由香はジャズ・ボーカルがとても上手だ。

由香は妹のように僕に馴れ親しむ。僕も由香の言うことは、何でも聞いてやった。

6月、プレーボーイ・ジャズ・フェスティバルへ二人で赴いた。大き目のクーラーにワインと刺身、そして鮨を詰め込んだ。二人ともウエイン・ショーターが目当てだ。♪ 楽しかったなぁー ♪、未だにあの時のことが、鮮明によみがえる。

独立記念日の夕刻、レドンド・ビーチへ出向いた際に、ワインを飲みながらシーフードを食した。その折に深刻な面持ちを浮かべて、由香がぽつりと口走った。
「私の両親、離婚するの」
由香は涙ぐんだ。

あの時、ピアーで夕映え眺めながら、由香が『虹の彼方へ』を口ずさんだ。その夜、僕と由香は夜が明けるまで共に過ごした。

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