2013年1月21日月曜日

恥と心の病


1990年代に、リトル東京のセカンド・ストリートで、日系人らしき青年のホームレスが、やはり日系の初老の男性に、小銭を無心している場面を垣間見たことがある。
 
初老の男性はホームレスに向かって、
「働け、働け!」

大きな声で語勢を荒げた。ホームレスは無言でその場を去った。その光景を見ていて、直感的に頭に浮かんだことがある。

多分、初老の男性は、怠け者は同胞の恥であると思ったに違いない。確かに、怠慢であることは感心しない。けれどもホームレスを一方的に、怠け者と決め付けるところに問題があると思う。

ホームレスになった者の経緯は様々であろうが、何らかの精神障害に陥っているホームレスが大半を占めている。

とある場所へ赴けば、元留学生を始め、日本人のホームレスがたむろしている。ドラッグ中毒や家庭内暴力、更には低収入のために生活苦に陥り、助けを求めている日本人が思いのほか多い。

彼らの実態が如実に表面化しないのは、本人の意思だけではなく、家族も第三者に多くを語ろうとしないからである。

世間体ばかりを気にしている日本人について、ルース・ベネディクトは「恥の文化」という論理を『菊と刀』の中で展開しているが、日本人にとって、恥も外聞もない行動に出る事は、非常に勇気のいることである。

さて、このような状況下で、在米日本人が神経症やうつ病等、心の病に悩んでいるケースが増えつつある。ある医療機関へ問い合わせてみると、日本人の精神科医はカリフォルニア州に一人しかいないという。

日本人を診察する精神科医は、日本の文化背景や習慣など、事細かに日本人気質を把握していなければ、治療が施しにくいのだろう。

それから、若い人たちには少ないと思うが、精神科へ通院することを「恥」であると考える偏見が、同胞の心の中に宿っていなければ良いのであるが。

0 件のコメント:

コメントを投稿