2012年6月29日金曜日

ポントルソン

10年前、江美子と二人でフランスを旅したことがある。モンサンミッシェルへ行く途中、ポントルソンの村で一泊しょうということになった。

酪農一家で経営するホテルは、客室数わずか5部屋の小さなホテル。ホテルも小さいが、客室も小ぢんまりとしている。極めつけは、シャワールームのドアが狭いこと。案の定、身体が入りきらない。

早速、ポントルソンの村を散策に出かけた。村に一軒しかないお惣菜屋に入ってみると、近隣の老婆が容器を持参して、ニシンのオイル漬けを買いに来ていた。

入れもの持参か、懐かしい。昭和30年代を彷彿とさせた。お惣菜屋の女主に、この辺りで、この村の郷土料理を食べさてくれるところを尋ねた。

家族で経営する、民宿の食堂を紹介してもらった。珍しい料理が出てくるのを期待して待っていたら、主が語りかけてきた。潮風に吹かれて育った子羊の肉が特産品だという。確か料理の名前はプレ・サレだったように思う。

特筆に値するのは、オンザハウスのスイーツだ。料理で腹が膨れてしまったので、デザートはもう入らないと思っていた。でも、せっかくだから一口食してみた。食べたとたんに、口の中に煌々と広がる豪奢(ごうしゃ)な味覚。今までに味わったことのない、摩訶不思議な好味に放心状態が続く。江美子と顔を見やわせても、しばらくのあいだ口もきけなかった。

夕食後、星月夜のポントルソンの村を、遠回りをしてホテルに帰った。道すがら、人っ子一人いない石畳の坂道で、吐く息だけが白い。静寂、のどか、星空、真空。正しく森閑とはこのことだ。しばらく森閑な空間に佇んだ。目をつむると、未知なる発見をした思いに浸った。

翌朝、モンサンミッシェルに向かった。バスの車窓から、潮風に吹かれる羊が放牧しているのが見えた。パリに戻ったら、知り合いの詩人ジェレミーに、潮風に吹かれて育った子羊の肉、プレ・サレを土産に買って帰ろうと決めた。


2 件のコメント:

  1. おはようございます。
    モンサンミッシェルにいらっしゃったのですね。
    素敵ですね。私も一度行きたいと思っています。ぜひお話をお聞かせください。
    昨夜メールしましたが、今、LAに来ています。ぜひお会いしたいと思っていますが、ご都合はいかがでしょうか?
    舟田譲二

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  2. 舟田先生、ご無沙汰いたしております。
    是非お会いいたしましょう。楽しみに致しております。
    どこぞで、いっぱいやっか!

    ひつじ

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