2014年9月30日火曜日

片恋

初めてあなたの手にふれたのは
サンタモニカの海岸通り
陽光に満ちた手つなぎの径(みち)は
追憶のかなたでまどろんでいる

初夏の夕べに
ジャカランダの木の下で佇んでいると
きょうも あなたのことばかりが
洋梨の香りをたずさえて 潮騒のようにさわぎたつ
海ツバメの羽毛のように身も心もときめいて
僕は大空へと舞い上がる

ああ あなたに逢いたい
僕の鳩尾(きゅうび)は
晩秋の回廊の陰で朽ち果てた
北風にふまれる茜葉のように
静かに燃えるだけ

青い月の光をおびて
あなたの愛くるしいしぐさは
水煙にかげるナイルのしらゆり

遠くから見つめていると
あなたの甘味な吐息を
僕の口もとにおぼえる

ああ するとどうだろう
僕の胸はいたくはりさけて
ビオラの弓弦(ゆづる)で
熱く げきれつに弾きうたれる


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