2011年11月14日月曜日

長野君

中学生の時分、長野君とは学校の帰り、数えるぐらいしか一緒に帰ったことがない。小学生の時も一緒の学校であったのに、話をしたことがない。

中学生になって同じクラスなった。それでも、長野君とは一言も話をしたことはない。長野君は目立たない、おとなしい、優しい、秀才だ。

ある日、僕たちは一緒に下校した。道すがら、僕はジョークの連発。長野君の老人みたいに、か細い声をあげて笑う顔が、未だに僕の脳裏に鮮明に焼き付いている。

長野君は背が低い、セムシ男のように背中が曲がっている。歯がボロボロで息がくさい。まるで、近所のご隠居と歩いているみたいだ。

コオロギが鳴く晩秋に、14歳の長野君はこの世を去った。正に青天の霹靂。今思えば長野君の両親は、長野君が長く生きられないことを知っていたのかもしれない。

でくの坊の、この僕が生きながらえて、秀才の長野君が夭折するなんて、これも神様の計画と言うことだろうか。

11月の星月夜に、裏庭のバルコニーで腰を掛けていると、コオロギが一匹、草笛の音の様に物悲しく啼いていた。

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