2011年11月4日金曜日

♪ 月がとっても青いから 遠回りして帰ろう。

11月6日、午前二時に夏時間が終わり標準時間に戻る。季節は一層秋立ち、夜空の蒼い月が下界へと媚びる晩秋の訪れだ。

一千年前、紫式部は詠(うた)っている。
「めぐりあひて 見しやそれとも分かぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かげ」

紫式部が『源氏物語』を綴った石山寺(滋賀県大津市)は、月の名所としても名高いが、この歌には紫式部が青春時代に恋愛体験をした懸想(けそう)が、色濃く刻み込まれていた。

露伴の句で惚れぬいているのがある。
「名月や舟を放てば空に入る」
(水面には月が映っている。舟を出すと、まるで夜空に浮いているみたいだ。)

月を題材とした定型詩や自由詩には、池、川、湖、潮が良きパートナー役を務めている。中原中也の詩『湖面』の冒頭は、「ポッカリ月が出ましたら 舟を浮べて出掛けませう・・・ 」。月のイメージは風流かつ由々しくもある。

「月」で連想したのが『竹取物語』だ。好色家で名が通っていた五人の貴公子たちは、一心不乱になってかぐや姫の家の周辺で露営を張りながら、闇夜になると垣根の隙間から家の中を覗き込んで情欲を燃やした。

求婚することを「呼ばふ」の連用形「呼ばひ」に転じて、「婚」(よばい)と当てられたが、後に彼らのような行為をすることを、「夜這い」と意識されるようになった。

月を見上げていると、つと萩原朔太郎の第一詩集『月に吼える』に思いが馳せた。序文に北原白秋は記している。「月に吼える。それは正(まさ)しく君の悲しい心である」と。白秋の序文は朔太郎の一つひとつの詩に、更に芳純な<におい>を漂わせることになる。それは朗月のように美しい、壊れる事のない友情であった。

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