2013年6月17日月曜日

毛虫


毛虫   -   ギィヨーム・アポリネール/堀口大学訳

働くことは金持ちをつくる
貧乏な詩人よ、働かう!
毛虫は休なく苦労して
豊麗な蝶(てふ)になる。



堀口大学の訳詩の集大成とも言える『月下の一群』(大正十四年 刊)の中から、『毛虫』を鑑賞する。

僕は陋宅の仕事場の壁に、この詩を拡大したコピーを十年ほど前から貼り付けている。何故ならば、往時のアポリネールの情況と自分自身が、だぶって見えて来たからだ。

さて、『毛虫』は僅か四行の短詩であるが、二つの構成に分かれて成り立っている。即ち一行目と二行目が第一部であり、三行目と四行目が第二部である。

第一部は、貧困に陥った時の自問自答である。それは詩を書く努力が、衆生世間に理解されないからである。けれども、生活していく為にはお金が必要なのである。

第二部は、詩人の魂はイマジネーションの美であって、決して物欲に溺れるものではない、と謳っている。従って『毛虫』は、相剋の哲理に煩悶するアポリネールの絶叫であるのだ。

巷では、『詩』など創らないで『田』を作れ。「あいつは詩人か、どうせ金がないのだろう。ジャニターの仕事でも世話してやれ」等と言われて来た。浮世では、詩人は肩身が狭いのである。

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