2013年5月20日月曜日

僕が食べたかったもの


夜明け前
へイデン・カルースの詩集を読んでいたら
突然おもてに飛び出したくなった
コーヒー・ショップへ行きたくなった
ベーコンにハッシュドブラウン
それから
スクランブルド・エッグかサニーサイドアップか
ボイルド・エッグかオーバーイージーか
一体どの料理方法が良いのだろう
僕は考えた
一生懸命考えて 考えて 考えた
僕はいつまでも迷っている

まだ眠っているワイフとジョイ
鯛介に桃三郎も起こして
静かで空気の澄んでいるコーヒー・ショップへ出かけましょう
へイデン・カルースの詩と一緒に水浴びをしていたら
早急にコーヒー・ショップへ行きたくなった
けれども なかなか行動には移せない

僕が黙っていると
ウェイトレスは卵の調理法をぼくに尋ねるだろう
「スクランブルド・エッグ オア サニーサイドアップ
僕は無言のままテーブルの前で鎮座している
一体どれを注文すればよいのだ
僕は先ず温かい紅茶をすするだろう
それからハッシュドブラウンは必ず注文する
だがハムかソーセージかベーコンか
卵焼きと同様にぼくには選択することができない

ああ 僕自身
今ここで生きていくべきか死ぬべきか
呼吸をするのかショット・ガンで心臓をぶち抜かれるのか
愛されているのか もてあそばれているのか解らない
おいウェイトレス
コーヒー・ショップの客ども
通りから中を覗き込んでいる偽善者よ
テレビに映っているニュース・キャスターめ
ぼくの胸元ばかりを じろじろと見るんじゃない
見るな
見るなって言っているだろう

ぼくは卵料理をオーダーできないけれど
キッチンから鋭利な肉切り包丁を持ち出してきて
自分の歴史を切り刻み
包丁を口腔に突き刺して首筋を貫通する
鮮血は食道へ垂れ流れて
紅蓮(ぐれん)地獄の形相で白まなこを剥き出して死んでしまうのだ

そこで日系のウェイトレスは
僕が目玉焼きを食べたかったことに
やっと気づくのさ



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