2014年10月22日水曜日

科学と読書(12年前の記事)

AP通信によると、『怒りの葡萄(ぶどう)』でノーベル文学賞を受賞した作家ジョン・スタインベックの生地サリナス(カリフォルニア州中部)で、スタインベック図書館など三つの公共図書館すべてが、近く閉館されることになった。理由は市が財政難のため、コスト減らしの一環として図書館を閉じる。

先頃、日米文化会館内のマーフィー図書館も、財政難を理由に閉館した。マーフィー図書館には移民文学の貴重な蔵書やスクラップ・ブックが保管されているので、研究者たちにとって資料の宝庫であった。
 
願わくは、いずれの図書館も廃館にはせず、財政が回復すれば再開してほしい。
 
七十年に大阪で開催された万国博覧会のスローガンは、「人類の進歩と調和」であった。科学の歩みは日進月歩であるが、活字離れは若い人たちの思考力を低下させる一方である。この不調和は、一体、人類にどのような影響を及ぼすことになるのだろうか。
 
一書を読了せざれば、他書をとらず。と言ったのは西田幾多郎だが、このスピード時代においては、全く説得力がなさそうだ。三島由紀夫も、昔の人は本の中をじっくり自分の足で歩いた。と回想している。
 
ついこないだ、ウォークマンを頭にして歩いている若者をよく見かけたが、現代人は携帯で話をしながら忙しなさそうに歩く。近い将来、海外旅行に出掛ける日本人は、全員マスクのようなものを口許にかけている。これぞ日本の英知を集めて完成させた自動通訳器。
 
外国人と思うままにコミュニケーションがとれる自動通訳器の氾濫により、世界中で邦人がらみの事件が多発する。
 
科学も読書も人間の心を豊にする。科学は時には人間に弊害をもたらすことがある。けれども、読書は人間の心に潤いを与えつづけてくれる。

 





 

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