僕が高校生の時分に、芥川龍之介の小説を読み終えてから、その中の一文が頭から離れなくなってしまった経験がある。それは『或る阿呆の一生』につづられてあった「人生は一行のボオドレエルにも若(し)かない」という一句だ。
ボードレールを英雄崇拝していた当時の僕にとって、芥川の援護射撃が、非常に心地の良い響きに聞こえてきたのである。
人生なんて、所詮ボードレールの一行にしか及ばない。ボードレールの成し遂げたことは、我々の人生の何倍もの価値がある。などと、勝手に理解して欣快になったものだ。
芥川は健康な精神状態の時よりも、病的な精神状態の時の方が、名作を書いている。この現象は、何も芥川に限ったことではなさそうだ。そうなると、狂気は、芸術のモティーフやテーマを司るには打ってつけである。
あなたは、ご自身の狂気を生かせていますか ?
僕は少し生かしている。
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