コレガ人間ナノデス
原子爆弾ニ依ル変化ヲゴラン下サイ
肉体ガ恐ロシク膨張シ
男モ女モスベテ一ツノ型ニカエル
オオ ソノ真黒焦ゲノ滅茶苦茶ノ
爛レタ顔ノムクンダ唇カラ洩レテ来ル声ハ
「助ケテ下サイ」
ト カ細イ 静カナ言葉
コレガ コレガ人間ナノデス
原 民喜(1905~1951/広島県出身)。『コレガ人間ナノデス』、タイトルと最初の一行、そして最終行が同じである。その他の詩人に於いても、同じ手法で書かれている詩が数多とある。この手法は、よほど吟味して描かなければ、陳腐な趣向に終わってしまう。
この詩の場合は、最終行の「コレガ コレガ」と繰り返したのは成功しているが、タイトルに関しては、ただ『人間』とだけにとどめておきたい。そうすることによって、「コレガ人間ナノデス」が、読者に痛烈に迫ってくる。それだけではない。人間の存在を普遍化させるイメージを作る。
また、ひらがなではなく、漢字とカタカナで綴ったことが、原爆のイメージをよりリアルに表現している。
元来、原 民喜は憂鬱症の詩人である。11歳で父を亡くしてから寡言の人となり、27歳でカルチモン自殺を図り、38歳の折に、十年間連れ添った貞恵夫人と死別している。そして翌年、広島で原爆被災したが奇跡的に助かった。
その後、原爆被災体験の詩を綴るが、民喜は自らの絶叫と、呪詛との挟間で苦悩し続けて、45歳の時に鉄路に身を投じて死去した。
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