中学生の時分、長野君とは学校の帰り、数えるぐらいしか一緒に帰ったことがない。小学生の時も一緒の学校であったのに、話をしたことがない。
中学生になって同じクラスなった。それでも、長野君とは一言も話をしたことはない。長野君は目立たない、おとなしい、優しい、秀才だ。
ある日、僕たちは一緒に下校した。道すがら、僕はジョークの連発。長野君の老人みたいに、か細い声をあげて笑う顔が、未だに僕の脳裏に鮮明に焼き付いている。
長野君は背が低い、セムシ男のように背中が曲がっている。歯がボロボロで息がくさい。まるで、近所のご隠居と歩いているみたいだ。
コオロギが鳴く晩秋に、14歳の長野君はこの世を去った。正に青天の霹靂。今思えば長野君の両親は、長野君が長く生きられないことを知っていたのかもしれない。
でくの坊の、この僕が生きながらえて、秀才の長野君が夭折するなんて、これも神様の計画と言うことだろうか。
11月の星月夜に、裏庭のバルコニーで腰を掛けていると、コオロギが一匹、草笛の音の様に物悲しく啼いていた。
2011年11月14日月曜日
2011年11月10日木曜日
豆腐
「世の中は豆で四角で柔らかで、又老弱に憎まれもせず」。中国からインゲン豆を日本へもたらした隠元禅師は、豆腐をこのように称賛している。
現代でこそ、お豆腐は健康食品の代名詞として圧巻だが、江戸前期の儒学者、貝原益軒は、自著『養生訓』の中で「豆腐には毒があって気をふさぐ」と記述している。
益軒は豆腐の食べ方について、「新鮮な豆腐を選んで、素早く煮て取り上げたら、大根おろしを加えて食べると害はない」とも記している。
江戸後期のベストセラー『豆腐百珍』の「絶品」の項目に、益軒の意向を参考としたらしい「湯やっこ」が紹介されている。
まず、豆腐を奴に切る。湯に葛を入れて、豆腐が浮き上がったら出来上がり。つけ汁は醤油を煮立てて、花かつおを入れる。湯をさしてもう一度煮立てる。薬味は葱と大根おろし、粉唐辛子。これなら家庭でも簡単に作れる。
先般、DVDで茂山狂言を観た。茂山狂言の家訓は、お豆腐狂言として語り伝えられている。その昔、婚礼や祝いの席で、余興に困ったら「茂山の狂言にしとこか」と言われた。京都ではおかずに困ったら「豆腐にでもしとこか」と言う。周囲からは「茂山の狂言はお豆腐屋」と揶揄されたそうだ。そんな陰口を逆手にとって、広く愛されて、飽きのこない、味わい深い『豆腐狂言』の精神を貫いている。
大の豆腐党であった泉 境花は、生ものに対する恐怖症があったために、湯豆腐しか食べなかった。しかも、ぐらぐらと煮えた湯豆腐を好んだ。
「湯豆腐やいのちの果てのうすあかり」。美食家の文人、久保田万太郎の一世一代の名句である。
周辺にいる日本人十人に聞いてみた。「あなたのお気に入りの豆腐は? 」。ガーデナの『明治豆腐』。サンゲーブルの『永和豆漿』(YUNG HO TOU CHIANG)。森永の『調製豆乳』。
平成5年(1993)日本豆腐協会は、語呂合わせから、毎月12日と10月2日を『豆腐の日に』制定した。
現代でこそ、お豆腐は健康食品の代名詞として圧巻だが、江戸前期の儒学者、貝原益軒は、自著『養生訓』の中で「豆腐には毒があって気をふさぐ」と記述している。
益軒は豆腐の食べ方について、「新鮮な豆腐を選んで、素早く煮て取り上げたら、大根おろしを加えて食べると害はない」とも記している。
江戸後期のベストセラー『豆腐百珍』の「絶品」の項目に、益軒の意向を参考としたらしい「湯やっこ」が紹介されている。
まず、豆腐を奴に切る。湯に葛を入れて、豆腐が浮き上がったら出来上がり。つけ汁は醤油を煮立てて、花かつおを入れる。湯をさしてもう一度煮立てる。薬味は葱と大根おろし、粉唐辛子。これなら家庭でも簡単に作れる。
先般、DVDで茂山狂言を観た。茂山狂言の家訓は、お豆腐狂言として語り伝えられている。その昔、婚礼や祝いの席で、余興に困ったら「茂山の狂言にしとこか」と言われた。京都ではおかずに困ったら「豆腐にでもしとこか」と言う。周囲からは「茂山の狂言はお豆腐屋」と揶揄されたそうだ。そんな陰口を逆手にとって、広く愛されて、飽きのこない、味わい深い『豆腐狂言』の精神を貫いている。
大の豆腐党であった泉 境花は、生ものに対する恐怖症があったために、湯豆腐しか食べなかった。しかも、ぐらぐらと煮えた湯豆腐を好んだ。
「湯豆腐やいのちの果てのうすあかり」。美食家の文人、久保田万太郎の一世一代の名句である。
周辺にいる日本人十人に聞いてみた。「あなたのお気に入りの豆腐は? 」。ガーデナの『明治豆腐』。サンゲーブルの『永和豆漿』(YUNG HO TOU CHIANG)。森永の『調製豆乳』。
平成5年(1993)日本豆腐協会は、語呂合わせから、毎月12日と10月2日を『豆腐の日に』制定した。
2011年11月8日火曜日
ボジョレーヌーヴォーとマカロン
20数年前に大阪でフランス料理を食べたとき、ソムリエがボジョレーヌーヴォーは如何でしょうかと僕に薦めた。僕は即座にボジョレーヌーヴォーは新酒なので、味が若くてあまり美味しくないと断った。僕は続けて、ならばカリフォルニアワインの方が美味いと告げた。にわかにソムリエが狼狽したのが分かった。
シェフが最後に登場してきた。挨拶をしたあとで、シェフ自らワゴンを押して、コニャクとチーズの盛り合わせ持ってきた。シェフは相好を崩して、サービスですと僕に告げた。
「ロックホォールは無いのですか?」
僕はボソリと呟いた。
シェフが言葉を詰まらせて取り乱した様子。
ボジョレーヌーヴォーなんて……なんで日本人が大騒ぎするのか、わからへん。
今年のボジョレーヌーヴォーの解禁日は、11月17日だっせ、忘れなはんなや。
僕がボジョレーヌーヴォーをたしなむときは、マカロンを肴にして賞味する。これが意外と良く合うのだ。
シェフが最後に登場してきた。挨拶をしたあとで、シェフ自らワゴンを押して、コニャクとチーズの盛り合わせ持ってきた。シェフは相好を崩して、サービスですと僕に告げた。
「ロックホォールは無いのですか?」
僕はボソリと呟いた。
シェフが言葉を詰まらせて取り乱した様子。
ボジョレーヌーヴォーなんて……なんで日本人が大騒ぎするのか、わからへん。
今年のボジョレーヌーヴォーの解禁日は、11月17日だっせ、忘れなはんなや。
僕がボジョレーヌーヴォーをたしなむときは、マカロンを肴にして賞味する。これが意外と良く合うのだ。
2011年11月7日月曜日
2011年11月4日金曜日
月
♪ 月がとっても青いから 遠回りして帰ろう。
11月6日、午前二時に夏時間が終わり標準時間に戻る。季節は一層秋立ち、夜空の蒼い月が下界へと媚びる晩秋の訪れだ。
一千年前、紫式部は詠(うた)っている。
「めぐりあひて 見しやそれとも分かぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かげ」
紫式部が『源氏物語』を綴った石山寺(滋賀県大津市)は、月の名所としても名高いが、この歌には紫式部が青春時代に恋愛体験をした懸想(けそう)が、色濃く刻み込まれていた。
露伴の句で惚れぬいているのがある。
「名月や舟を放てば空に入る」
(水面には月が映っている。舟を出すと、まるで夜空に浮いているみたいだ。)
月を題材とした定型詩や自由詩には、池、川、湖、潮が良きパートナー役を務めている。中原中也の詩『湖面』の冒頭は、「ポッカリ月が出ましたら 舟を浮べて出掛けませう・・・ 」。月のイメージは風流かつ由々しくもある。
「月」で連想したのが『竹取物語』だ。好色家で名が通っていた五人の貴公子たちは、一心不乱になってかぐや姫の家の周辺で露営を張りながら、闇夜になると垣根の隙間から家の中を覗き込んで情欲を燃やした。
求婚することを「呼ばふ」の連用形「呼ばひ」に転じて、「婚」(よばい)と当てられたが、後に彼らのような行為をすることを、「夜這い」と意識されるようになった。
月を見上げていると、つと萩原朔太郎の第一詩集『月に吼える』に思いが馳せた。序文に北原白秋は記している。「月に吼える。それは正(まさ)しく君の悲しい心である」と。白秋の序文は朔太郎の一つひとつの詩に、更に芳純な<におい>を漂わせることになる。それは朗月のように美しい、壊れる事のない友情であった。
11月6日、午前二時に夏時間が終わり標準時間に戻る。季節は一層秋立ち、夜空の蒼い月が下界へと媚びる晩秋の訪れだ。
一千年前、紫式部は詠(うた)っている。
「めぐりあひて 見しやそれとも分かぬ間に 雲隠れにし 夜半の月かげ」
紫式部が『源氏物語』を綴った石山寺(滋賀県大津市)は、月の名所としても名高いが、この歌には紫式部が青春時代に恋愛体験をした懸想(けそう)が、色濃く刻み込まれていた。
露伴の句で惚れぬいているのがある。
「名月や舟を放てば空に入る」
(水面には月が映っている。舟を出すと、まるで夜空に浮いているみたいだ。)
月を題材とした定型詩や自由詩には、池、川、湖、潮が良きパートナー役を務めている。中原中也の詩『湖面』の冒頭は、「ポッカリ月が出ましたら 舟を浮べて出掛けませう・・・ 」。月のイメージは風流かつ由々しくもある。
「月」で連想したのが『竹取物語』だ。好色家で名が通っていた五人の貴公子たちは、一心不乱になってかぐや姫の家の周辺で露営を張りながら、闇夜になると垣根の隙間から家の中を覗き込んで情欲を燃やした。
求婚することを「呼ばふ」の連用形「呼ばひ」に転じて、「婚」(よばい)と当てられたが、後に彼らのような行為をすることを、「夜這い」と意識されるようになった。
月を見上げていると、つと萩原朔太郎の第一詩集『月に吼える』に思いが馳せた。序文に北原白秋は記している。「月に吼える。それは正(まさ)しく君の悲しい心である」と。白秋の序文は朔太郎の一つひとつの詩に、更に芳純な<におい>を漂わせることになる。それは朗月のように美しい、壊れる事のない友情であった。
2011年11月3日木曜日
『みつる寿司』
リトル東京の老舗大衆鮨屋、『みつる寿司』Mitsuru Sushi & Grill。メニューは洋食、和食何でもある。すしバーで座って、鮨をつまむのもよし、名物、鯖棒が飛びきり美味い。
316 E 1st St Los Angeles CA 90012 213-626-4046 無休
316 E 1st St Los Angeles CA 90012 213-626-4046 無休
2011年11月2日水曜日
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